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安楽死の部屋

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彼も彼女も動物病院にペットを安楽死させるための部屋があるのを知らなかった。
 
 
ミズ ビーを抱きかかえて、一緒に、その部屋を見るのは、あまりにも残酷なので、他の病院スタッフに、その間、ミズ ビーが動いて診察台から落ちないように見ていてもらうことにした。
 
 
その部屋に入ると、ヒンヤリと冷たい空気が彼女を包んだ。
 
 
窓は動物病院の駐車場に面していて、その横には、駐車場に、直接、行けるドアがあった。
 
 
その窓は、中から外を見ることが出来ても、外から中は見えないようになっているようだった。
 
 
彼女は、その光景を見て、過去に見て不思議に思った出来事の真意を理解することができた。
 
 
いつだったかはハッキリと憶えていなかったが、彼と彼女がミズ ビーを連れて、その部屋のちょうど正面に車を停めた時だった。
 
 
ブロンド ヘアーでスレンダーの若めの男性が、突然、そこから、痩せた白い犬を両手で抱えて出て来た。
 
 
彼の顔の表情は普通に、そして、むしろ、微笑んでいるかのように見えたが、彼の後ろにいて、ドアを片手で中から押さえていた女性の病院スタッフの顔は赤く、そして、目は、もっと赤く、口元はもう一方の手で覆われていた。
 
 
目を閉じて、力無く、ダラーッとその男性の両腕で抱えられたその白い犬は、洗ったばかりの白いティシャツが洗濯竿にかけられているかのようで、彼女の目には、今にも飛んでしまいそうにさえ見えた。
 
 
骨と皮だけのように痩せてはいても、体毛は白く輝き、顔は、骨格からして、ミズ ビーと同じ位だったので、彼女は彼に、
 
 
 
「  あの犬、ミズ ビーと同じ位の大きさの犬みたい。多分、大型雑種犬ね。体毛が輝いていたから、まだ若いのかもしれない。白い犬は年老いて白髪が出てもわからないから、何とも言えないけれど。。。。」
 
 
 
そして、
 
 
 
「  ねぇ、あの犬、どうしたと思う?  手術後で、まだ麻酔が切れていなくて、眠っているのかもね。。。。 だけど、なぜ、病院スタッフの女性が泣いた顔をしなくちゃいけなかったんだろう?。。。。でも、彼は微笑んでいた。 」
 
 
 
そう言った。
 
 
安楽死の後なのかもしれない、
 
 
そう思っても、彼女は、それを言葉にして言えなかった。
 
 
彼は、渋い顔をして、低い声で、
 
 
 
「  わからない。」
 
 
 
とだけ言った。
 
 
その後は、彼と彼女は、その時の事を話すことは無かった。
 
 
しかしながら、
 
 
その男性とあの白い犬が出て来たその部屋に自分がいる
 
 
と言う現実から、
 
 
あれは、安楽死の後だったんだ
 
 
と断定せざるおえなかった。
 
 
アシスタントは、その部屋について説明しだした。
 
 
 
「  そのソファーに、あなた達とペットに座ってもらい、ペットが動かないように押さえてもらいます。その時に、時間の空いている獣医が、あなたのペットを安楽死へと導きます。その行程は、そんなに時間がかかりません。その後は、あなた達がいたいだけ、そこにいてもかまいません。」
 
 
 
そのソファーは、誰かが捨てたくても捨てる場所が見付からなくて困って、やっと、そこに置いてもらったかのように古くて使い過ぎて、形も、かなり崩れていた。
 
 
彼女は、
 
 
それまでに、どの位の数のペットが、そこで息を引きとったのだろうか ?
 
 
そのペット達は、飼い主の決断で、そこで、そうなるのを心から望んだろうか ?
 
 
などと思ったりした。
 
 
部屋を見回すと、猫の顔が彫られた木箱があった。
 
 
彼が、
 
 
 
「  それは、何ですか? 焼いた後に骨を入れる箱のサンプルですか?」
 
 
 
と尋ねると、アシスタントは、
 
 
 
「  その猫は、ここで安楽死して、焼かれた後に遺骨となって木箱に入って、ここに戻って来たんです。」
 
 
 
と言った。
 
 
彼女は、不思議と、その猫が、そこにいるように感じて、
 
 
 
「  猫は、9回、生まれ変わるって言うよね。」
 
 
 
と言ったが、
 
 
なぜだか目が潤んだ。
 
 
そして、その部屋を出た。