突然死のショック

 



彼が帰宅してから、みように真剣な顔をして、頭を抱えるようにして、ただひたすら、携帯を見ていた。
 
何か、あったのかと思って、彼女が、
 
「 一体、どうしたの? そんな顔して? 何か大変な事でも起きたの?」
 
そう訊くと、彼は、携帯を見つめたまま、頭を横に何度か振りながら、
 
「 何も起きていないよ 」
 
と言った。
 
「 嘘でしょうー? どうして、私を見て、言わないの? 」
 
彼女が、そう言っても、彼は彼女を見る事なく、携帯だけを見ていた。
 
「 会社を首になったの?」
 
「 誰か死んだの ?」
 
「 誰か病気で倒れた ? あなたのお母さん ?」
 
彼女が、そこまで言うと、
 
彼は、だるそうに彼女を見て、
 
「 違うよ〜。どれも違うよ。午後から頭痛がして、変な気持ちなんだよ。」
 
と言った。
 
そして、椅子に座って、また、真剣な顔をして、携帯を見だした。
 
彼女も椅子に座り、彼を、しばらく見つめた後に、
 
「 それだけじゃないでしょう? 何か、あったんでしょう? 」
 
と言った。
 
彼は、溜め息をついた後、話し出した。
 
そして、彼女は、彼の同僚の妻が急死したことを知った。
 

それも、彼らはヴァケーション中だったということだった。

 
上司が、その人から電話をもらって、しばらく会社に来れないからと告げられたわけだが、その人のショックが大きいのを感じたそうだ。
 
その話を聴いてから、彼は頭痛がするそうだ。
 

「 だけど、あなた、その人の奥さんに会ったこと、無いのでしょう? あなたの上司が急死した時は、けっこう平気だったじゃない? 」

 
彼女は、そう言った。
 
「 なんだかわからないけれど、怖くなったんだよ。俺だって、もう若くはないわけだし、、、、」
 
彼は、いつになく、暗い顔をして、そう言った。
 
ミズ ビーが生きていた頃は、
 

『 もう若くはない、、、、』

 
などと、言った事など無かった。