ミズ ビーのパピー時代のアパート



彼と彼女は、週末休暇を利用して、2人が以前、住んでいた大都会に行った。

 
その大都会で、彼女はミズ ビーに会い、その後、彼に会った。
 
着いて間も無く、彼が、
 
「 俺たちが別々に住んでいた辺りに行って見ないか? 変わっているかどうか見に。」
 
と、言った。
 
彼女は、ちょっとだるそうに、
 
「、、、、う〜〜ん、行きたくない。ミズ ビーとの思い出が沢山ある所は見る気にならない。ミズ ビーが一緒なら、見に行きたいけど。そうじゃない今は辛くなるだけ。」
 
そう言った。
 
彼は、それに対しては、もう何も言わず、元気に、わかったとだけ言った。
 
翌朝、遅くに起きて、車に行くと、車内がすでにオーブンのように熱くなっていて、シートに座るとショートパンツからむき出した太ももが悲鳴を挙げそうだった。
 
彼が、クーラーを最大限にセットしたが、彼女の前の窓際のクーラーの風の出口だけが、風が出て来なかったので、彼女が、それを伝えると、彼は、
 
「 そんなわけは無いだろう! 出て来ないわけはないはずだ!」
 
とムキになった。
 

彼女は、本当のことを言ったに過ぎないのに信じてもらえない事に苛つきながら、

 
「 手を当ててみてよ!微かにクールさを感じるけれど、風が出て来ないでしょう? 昨日までは風が強く出ていたのに、急に、こう成っちゃうなんて、、、、壊れちゃったんじゃない?」
 
そう言った。
 
彼は、その部分を叩いたり、クーラーのスイッチをいじりながら、
 
「 壊れるわけはない! 」
 
と何度か言った。
 
彼女は、それからは、クーラーについて言うのは、しばらく止めようと思った。
 
彼の座っている窓ぎわと彼と彼女の間のクーラーは問題なく、強い風が元気に出ていた。
 
それなのに、なぜ?
 
二人は、高速道路を走る車の音以外は聞こえない沈黙の中で、しばらく考えていた。
 
観光客達が、いつも、群がっているビーチ近くに車を駐めて、ブランチを済ませた後、彼が、
 
「この後、何がしたい? どこに行きたい?」
 
と、
 
彼女は、自分が、そこにいるのが場違いのような気がして、
 
「 もう、ここは充分、見たって感じ。、、、、昔のアパートの辺りに車、走らせてくれるかなぁ?」
 
と、言った。
 
彼は、うなずき、車に戻ろうと言い、車が走り出してから、
 
「 ミズ ビーと一緒に暮らし始めた、あのアパートが、たまらなく見たくなった。あそこに住んでいた時に、ミズ ビーに会い、その半年後位に、あなたに会った。ミズ ビーのパピー時代のアパート、ここまで来ているのに見ないで帰っちゃいけないように思う。」
 

彼女は、言った。

 
そのアパートが近くなるにつれ、パピー時代のミズ ビーと彼女の事が思い出され、
 
「 ここ、ミズ ビーと一緒に、よく歩いた〜!」
 
「 この交差点まで、ミズ ビー、1人で走っちゃって、私、だめだー!止まれー!とかと叫びながら、必死に追いかけてね、やっと、ミズ ビー、横断歩道の前で止まって、クルリと後ろ向きになって、私の方に戻って来てくれて、、、、あの時は、本当に危なかった。」
 
そんな事を話していたら、彼が車を、そのアパートの近くに停めた。
 
車の中から、アパートのベランダが見えたので、彼女が、
 
「 あのベランダに、ミズ ビー、よく出て、外の景色を眺めたり、救急車や消防車のサイレンに、雄叫び、あげたりして、、、、可愛かったなぁ〜 」
 
そう言ったら、胸が一杯に成って、言葉に詰まった。
 
気持ちを落ち着かせてから、彼女は、
 
「 今度は、あなたのアパートの番よ。行って見よう!」
 
そう言い、彼は、車をスタートさせた。
 
そのすぐ後に、彼女は、冷たい風を感じた。
 
気がつくと、その風は、壊れたと思ったクーラーから強く噴き出していた。
 
「 ねぇー、風が出ている! 触って見てよ! 壊れていなかったってこと? それとも、なおったってこと? それも、また、急に?」
 
彼女が驚きながら、そう言うと、彼は、嬉しそうに笑い出した。