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犬の毛

 
着ていたブラックシャツを見ても、1本の犬の毛も付いていなかった。そして、虚しくなった。
 

ミズ ビーの姿が完全に燃えつきてしまってから、もうすぐ1年を迎えようとしている今は、彼女の1本の毛さえ見ることは無い。

 
こんなに、早く?
 

取っても取っても、決して取り去ることが出来なかったのに。。。。

 
あれっ、こんな所にも、ミズ ビーの毛が?
 
そんな風に驚かしてよ! ミズ ビー!
 
子供の時、いつも、毛だらけだった。
ポポがいたから。
 
クラスメイト達に笑われることも多々あった。
 
女の子達が後ろから追いかけて来て、突然、前に立ちはだかり、ニーッと笑って、
 
「アオイちゃん、猫、飼っているでしょう?」
「飼っていないよ。」
「じゃあ、どうして、洋服に、たくさん毛が付いているの?」
「そう?たくさん?ほんのちょっとじゃない?!家の犬の毛かもね。家の中で飼っているから」
「犬?家の中で〜?!お母さんが言っていた。犬は汚いって!」
「汚くないよー!かっわいいよー!」
「アオイちゃん、へん!」
「家に遊びに来なよ。家の犬、見に!」
 
そんな会話を小学1年生の時にして、毛が付いていると、新しい友達が出来るのかと思った。
 
そして、後日、その子達が後ろから駆けてきたので、自分の前で止まって話をするのかとウキウキしていたら、その子達は、見て見ぬ振りをして走り去ってしまった。
 
そんな日が続き、もっと毛を付けたら気付いてくれるかもと思い、洋服をブラシしないで学校に行った。
 
だが、その子達は、無視するようにして、また、走り去ってしまった。
 
納得がいかなかったので、その子達を追いかけて呼び止めて、洋服に付いている毛を誇らしげに微笑みながら見せると、
 
「わぁ〜っ!毛が沢山付いてて気持ちわる〜い!」
「きったな〜い!」
「アオイちゃんとは友達になれない。お母さんがダメだって言ったから!」
 
そんな風に言われた。
 
それから、家までの道、ショックと悲しさで、下を向きながら歩いた。
 
そして、犬の元気な吠える声で、顔を上げると、ポポが窓から、飛び跳ねながら、嬉しそうに吠えていた。
 
私の友達は、ポポなんだ!
 
そう思った。
 
『去る者は追わず!』
 
あの時、この諺を知らなかったけれど、すでに、わかっていた。