狙われる時

彼と彼女は、食料品を買うために、マーケットに行った。

 
思ったより混んでいて、彼女が驚いていると、
 
「 もうすぐで休みも終わりだ。この間に家を空けていて、帰って来たら食べる物が無くて、仕事が始まる前に買い溜めようと、みんな、思うものなんだ。」
 
彼は、そう言った。
 

彼女は、周りを見回して、

 
「 だけど、カートどころかカゴも持たないで、ただ歩いている人も、けっこういるじゃない?」
 
不思議そうに、そう言うと、彼は笑い出して、
 
「 わかるだろう? 買い物が目的じゃなくて、新年早々、悪いことなど起きるわけは無いと陽気に買い物に夢中に成っている人間が目的なんだよ。」
 
そう言って、彼女も、いつもなら気を引き締めて周りを見て気を付けているのに、今年初めての買い物に、なぜだかフワムワしている自分に気が付いた。
 
注意しながら歩き出すと、同じ女性が、常に、彼女のすぐそばにいることに気が付いて、ゾーッとした。
 
彼女が止まれば、その女性も止まり、彼女が動けば、その女性も動く、まるで、彼と彼女が、その女性と一緒に買い物をしているかのように、その女性は近くにいて、何も持っていない。
 
彼女が、その女性の顔を見ると、その女性はビクッとして、彼女から距離を置いた。
 
食べ物を探している風にも、見ている風も無かった。
 

みように緊張しながら歩く、その女性は、彼と彼女の目には奇妙に映った。

 
疑いたくない、
 
それも、新年から。。。。
 
そう思いつつ、まだ疑っている。
 
疑った自分に罪悪感を感じながら、
 
自分に近づき過ぎたその女性が、やっぱり悪いのだと思う。
 
「 気を付けろよ!」
 
彼の声に気が付くと、その女性は、もう彼女のそばにはいなかった。
 
ミズ ビーがいたら、すぐに駆け寄って、
 
『 マミー、シッカリしなくちゃね〜!』
 
そう言って、ミズ ビーから元気を貰っていただろう。

 

彼女は、そう思いながら、家路までの道の途中に、まだ飾られているクリスマス ライトを見つめた。