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4本足のゲスト

 

 

見えなくても、いるような、そんな気がする時がある。

 
彼女は、ミズ ビーが彼女が座っていたリクライニングチェアのすぐそばの床に座って彼女を見ているような気がしたが、実際に、それが見えたわけでは無かったので、
 
気のせいか、
 
自分のミズ ビーに会いたい思いが、そんな気にさせているのだと思い、何もいない床の上を見ながら自分を鼻で笑った。
 
そして、ミズ ビーがいた頃は、彼とミズ ビーとの3人家族が自分の家族 ( 彼はパックと呼んでいたが ) と思っていたが、ミズ ビーを喪った今は、自分達を家族と言うよりカップルと呼ぶべきなのかと思ったりして、ちょっと寂しくなった。
 
孤独に慣れているはずなのに、
 
そして、
 
孤独が嫌いじゃないはずなのに、
 
いつも、家族に憧れていた。
 
 

 

 
そして、数時間が過ぎ、彼の机の近くを通りかかると、ランチバッグがその近くに置かれているのが目についた。
 
どうして、ランチバッグを床の上に、それも、キッチンでは無く、机の近くの床に置き去りにするのだろう。。。。
 
そんな風に、彼の行動に呆れながら、そのバッグを持ち上げると、微かに重く、何かが入っているのは間違いなかった。
 
開けると、ビンゴー!
 
空の丸い容器が入っていた。
 
数日前に、前日の夜に食べ切れなかったシチューをその容器に入れて、翌朝、彼が、そのことを言ったことを彼女は思い出した。
 
洗っていないだろうと思って、見てみたり、蓋を開けて嗅いで見ると、汚れも臭いも消えていて、
 
彼、けっこうやるじゃない?!
食べて、すぐ、洗うなんて。
 
彼女にとっては当たり前のようなことでも、彼に、驚かされることも、しばしばあるので、なぜだか、彼を褒めてやりたい気持ちになった。
 
が、それは、心の中だけのことで、彼には、直接、言わないでおこうと思った。
 
容器をすぐ閉めようと思ったが、外側にあるジッパー付きの小さいポケットが気になり触ると、四角い何かが入っていた。
 
あ〜〜っ、きっとコンパクトな手拭きのパッケージだ。
エライ、エライ、

食事の前には手を洗うか、手拭きを使うようにしているからなんだよね。

 
そう思いながら、笑いながら、開けて、その四角い物を出して見ると、
 
それは手拭きでは無く、ホテルで貰ったマグネットだった。
 
そこには、『 4本足のゲスト。一頭( 匹 ) のペットが中にいます。』
 

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彼女は、そのマグネットを両手でつかんだまま、それだけを見つめ、ミズ ビーの顔をイメージした。
 
ミズ ビーと一緒に滞在したホテルで貰った物なのは間違い無かった。
 
こんな所に入っていたとは。。。。
 
それに、彼がバッグを偶然そこに置いたのだろうけれど、考えてみたら、ミズ ビーは、彼が家にいない時は、彼の机のそばで昼寝することが多かった。
 
ミズ ビーは、生きていた頃、メッセージ付きの小さなベアーの置き物を彼女に持って来たことがあった。
 
 
そのせいもあってか、そのマグネットがただのマグネットだと、彼女には思えなかった。
 
誰もいない家の中で、
 
 
「 ミズ ビー! ミズ ビーだよね! ミズ ビーは、ゲストじゃないよ! 家族だよ! 今でも、家族だよー!」
 
 
彼女は、そう叫んだ。