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親の無知、子供の疑問

 
彼女が幼い時は、大型犬や雑種犬は外で飼うものと思っている人達が周りに多くいた。
 
 そして、その人達の多くが犬を外で飼う目的は、空き巣や泥棒撃退のための犬で番犬と呼んでいた。
 
そのためもあって、犬達は散歩などもしてもらえず、同じ場所に鎖などで繋がれていた。
 
 吠えなければ番犬に成らないわけで、吠えない犬は何処かに捨てられたり、保健所に送られ殺された。
 
吠えなくなって、ご飯ももらえず、邪魔物扱いされ、どんどん痩せて死んだ犬もいた。
 
 
そんな犬達には、家の人達が外に出て来たり、御飯を持って来たりした時に会うことしか楽しみが無いようで、1人でいる時は、子供だった彼女の目にも、つまらなそうで、寂しそうで、辛そうで、可哀想に思えた。
 
 
『 ねぇ、どうして、大きかったり、雑種だったりすると、外に繋がれて、人の残飯を貰って、散歩にも連れて行ってもらえないの? 』
 
 
子供の彼女が母親に、そう訊くと、
 
 
『 可哀想だけど、大きな犬に生まれて来て、ましてや、雑種だったら、野良犬に成って保健所に連れて行かれて殺されるか、そうして、番犬に成って生きるかしかないのよ。それが雑種の運命なの。』
 
 
母親は、そう言った。
 
 
彼女は、ピュアブリードの小型犬のポポが家の中を自由に歩いているのを横目で見ながら、同じ犬なのにと納得できず、犬の世界にも不平等があることを知って悲しかった。
 
 
そして、自分が犬に生まれて来たとして、大型犬の雑種だったら、あの犬達のように愛も自由も無い辛い不幸な奴隷人生を歩まなければならなかったのかと思うと怖かった。
 
 
ポポに、
 
 
『 ポポ、お前は、幸せだよ! ピュアブリードじゃなかったら、保健所で殺されていたか、ここに来る事も無く私の弟になることも無かったね。』
 
 
そう言っても、ポポは元気に嬉しそうに飛び跳ねていた。
 
 
母親は、ピュアブリードの小型犬しか飼おうとしなかった。
 

それは、ピュアブリードの方が雑種より、はるかに美しく頭が良く、小型犬は散歩しなくても家で自由にさせておけば、トイレも家の中で出来るし、それが運動となるからと言った全くの無知な偏見と思想を持っていたからだった。

 
 
子供の彼女には、犬を物のようにして、お金で買うことも、タダで人懐こい雑種犬を母がペットとして全く考慮しないのも理解できなかった。
 
 
母親は、猫をも嫌い、猫は死んだら化けて呪いに来るから怖いと言って、彼女をも怖がらせた。
 
 彼女のいとこ達や友達は、親達から、犬はかじる物として教えられ、犬を見ると、いつも、青い顔して走って逃げていた。
 
 
子供は、親の言うことを信じる。
 
それが、全くの間違いであっても。
 
 
あの時、母親や、周りの大人達が、あのように無知では無くて、動物の命を秤にかけることが無かったら、もっともっと多くの動物達が救われ、人間達に無償の愛を与え、人間達の動物達への偏見を崩し、教育し、一緒に暮らすことが、どんなに素晴らしく、どんな高価な物にも相当しない、限りなく大切な体験となり、その人達の子供達にも、その思想を伝授できただろう。
 
 
だから、彼女は、動物を飼うことに関して、まだまだビギナーだと思っている。
 
 
『 ミズ ビー、ごめんね。もっともっと、ミズ ビーのために出来ることがあったと思う。ごめんね。』
 
 
彼女は、毎朝、そう思う。
 
 
彼は、或る夜、うつむきながら、渋い顔をして言った。
 
 
『 結局、俺達、ビギナーだったんだよ。』
 
 
彼女は、黙って頷き、彼女も、そう思ったことは言わなかった。
 
そして、むしろ、彼にも、ミズ ビーを喪った悔しさや後悔が今でもあることに、ちょっと驚くと同時に、同情できた。