スイート ドッグ

 
テレビを観ていたら、ホワイトのピットブルが映っていて、数ヶ月前に全くひと気の無い雑草が生い茂るような山中に独りでいることを知らされたレスキューグループが、いろいろ策を凝らしても、用心深いのと、すぐに気付いてしまうのとで、確保するのに梃子摺った犬だったことは彼女も知っていた。
 
 
初めて、その犬が草むらから顔を出し立ちはだかる姿が画面に映った時は、彼女も、思わず、
 
 
『 綺麗な犬ね〜!』
 
 
と叫んだ。
 
 
それほどの美しい犬が誰もいない山中で独りで生きていると言う事実がジョークのようで信じられなかった。
 
 
その犬は、捕らえられても、吠えることも牙も見せることなく、大人しく抵抗しなかったことから、誰かに飼われていたのは間違い無く、そうだとすれば、その人物が、そのような所に、まだ仔犬だったその犬を置き去りに、或いは、捨てたのは、残酷きわまりない行動だった。
 
 

しかしながら、過去は、もうどうでも良いことだ、

 
この子には、未来がある。
 
住む所も食べる物も与えられ、どこか、この子を大切に愛情を持って育ててくれる家に貰われて、
 
それは、それは、幸せに成ったとさ!
 
と、簡単に言えば、そんなストーリーが待っている。
 
 
そんな風に、彼女は思っていた。
 
 
それが、その子が病にあり、それも、山中で生きていたために、その病に成ってしまい、獣医も手の施しようが無いほどまでの手遅れで、ただ死を待つしか選択が無いと聴いて、彼女は言葉を失った。
 
 
世話係だった女性が、涙ながらに、他の女性に言った。
 
 
『  本当にスイートな犬よねー?   とってもスイートなのに、、、、なぜ、こうならなくちゃいけないのー?! 』
 
 
その犬は、自分のことより女性のことを心配するように女性の顔を見上げた。
 
 
彼女には、その犬が、その女性に向かって、
 
 
 
『  泣かないで。私のことはいいの。もう準備は出来ているから。捨てられてから、あの山中で暮らしている時は、一時も安まる時は無かった。本当に、この上無く孤独で怖い日々だった。あなたたちに助けられ、愛情を注がれ、自分がゴミみたいな存在では無く、見かけも中身も、美しくスイートで、誰かが欲しがるような存在である事を知った。そして、今、自分の不幸に心から同情して涙を流してくれるあなたがいる。あなた達は、私の命に希望が無いからと言って、私を山中に連れ戻して置き去りにすることは無いでしょう。ありがとう。あなたなら、私のことを憶えていてくれる。』
 
 
 
そう言っているように思えた。
 
 

 


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