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利他

 

彼が言った。

 
 
 
「 ミズ ビーは、どんな時でも、どんな状態になっても、俺達を守ろうとした。歩けなくなっても、目が見えなくなっても、声が出せなくなっても、食べることが出来なくなっても、、、、仕草でさ、、、、最後の最後まで、俺達のことを心配していたよなぁ〜、、、、自分が守らなければ、誰が守るって感じで、子犬達を残して死ななければならない母犬みたいだった。」
 
 
 
彼女は、
 
 
 
「 自分のことだけ考えていたら、もっと長生きできたかもしれないのにね〜。」
 
 
 
そこまで言って、言葉に詰まった。
 
 
 
彼女は、ミズ ビーと出会い、孤独から解放された。
 
 
 
自分の利益など考えずに、ただひたすら、ミズ ビーのハッピーな顔を見たかった。
 
 
 
そして、それが、彼女にとっても幸せであることを気付かせてくれたのは、親でも教師でも友達でも無く、ミズ ビーだった。
 
 
 

ミズ ビーに出会う前までは、友人関係にしても、男女間の関係にしても、常に同等であるべきだと思っていた。

 
 
 
たとえば、友人や交際相手がお茶や食事をおごってくれたら、その相当な分をなるべく早くにお返し、自分が与えた立場であったら、お返しを期待し、そうでない場合は秘かに憤慨した。
 
 
 

それゆえ、借りを作るのを怖れ、極力、避けようとした。

 
 
 
他人を助けたいと思っても、向こうが頼んで来るまで待つようにした。
 
 
 
それは、他人にプレッシャーを与えず、自分の好意をも拒絶されないためだった。
 
 
 
その為に、人間関係が、温かみのない薄っぺらなものになることがあった。
 
 
 
そして、実際、そこには、リスクも無いが、自分のためになるものが何も無かった。
 
 
 
彼女が、ミズ ビーから学んだことは、利他だった。
 
 
 
利他とは、
 
 
 
【 他人に利益となるように図ること。自分のことよりも他人の幸福を願うこと】
( デジタル大辞泉 )
 
 
 
利他的行動とは、
 
 
 
【 ヒトを含む動物が他の個体に対しておこなう自己の損失を顧みずに他者の利益を図るような行動のこと】
(Wikipedia) 
 
 
 
自分が『ヒトを含む動物』を助けたければ、そうすれば良い。
 
 
 
自分で決めて、そうしたのなら、お返しは、期待するべきではない。
 
 
 
そう考えれば、彼に、
 
 
 
「 あなたのためにランドリーもしたのよー!」
 
 
 
と言った時に、彼から
 
 
 
「 頼んだ覚えは無いぞー!」
 
 
 
と言われても、彼の言う通りだと思える。
 
 
 
しかしながら、
 
 
 
ミズ ビーが彼女のためにしてくれた利他は、そんなこととは比べ物にならないほど、限りなくピュアで高貴なものだった。