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『 父の日 』のカード

『 父の日 』の数日前に、家の中で、ペーパー類を整理していたら、過去に買った幾つかのカードが出て来た。

 
 
 

カードの表紙は、全て、イラストも写真も犬が装飾されていて、

 
 
 
カードを開くと、全て、父親へのメッセージがプリントされていた。
 
 
 
 

 
 
 
『 いつも、あなたを見上げているよ ! Happy Father's Day ! 』
 
 
 
『 あなたが、ドアを開けて中に入って来る時ほど、ワクワクすることは無いよ。
     Happy Father's Day ! 』
 
 
 
 
などと、人間が犬の気持ちになって、犬が飼い主の Father に『 父の日 』に向けてのメッセージのカードで、
 
 
 
彼女が、ミズ ビーが生きていた、ずいぶん前に、ミズ ビーから彼へのカードとして買ったものだろうけれど、
 
 
 
結局は渡せず、そのまま、捨てられない古い物達と一緒にして、しまいこんでいたようだった。
 
 
 
彼女は、今度こそ、その中の1つを彼に渡そうと思った。
 
 
 
ところが、、、、
 
 
 
『 父の日 』になって、
 
 
 
それに気付きながら、
 
 
 
そして、
 
 
 
『 渡そう! 』
 
 
 
『 渡そう ! 』
 
 
 
と、彼の顔を見るたびに思いながら、、、、
 
 
 
渡せなかった。
 
 
 

多くの人達は、犬が亡くなったら、空から、飼い主を見守ってくれていると言う。

 

 

 

それなのに、

 
 
 
『 いつも、見上げているよ !』
 
 
 
は、過去は、そうでも、
 
 
 
現在の状況とは違ったものとなり、
 
 
 
彼も、多くの人が思うように思っているとしたらと考えると、彼女は、少し憂鬱に成った。
 
 
 
彼女は、時々、ミズ ビーが彼女を見上げているような、そんな風に感じることがある。
 
 
 
しかしながら、
 
 
 
彼が、今、どのように、ミズ ビーの存在を思っているのかは、彼女は知らない。
 
 
 
『 あなたが、ドアを開けて中に入って来る時ほど、ワクワクすることは無いよ。』
 
 
 
は、ミズ ビーが、そうだったから、そう思っていただろうと思えるが、
 
 
 
『 今も? 』
 
 
 
と、考えると、
 
 
 
『 そうだ! 』
 
 
 
とは、彼女も言えなかった。
 
 
 
それに、彼から、
 
 
 
『 なぜ、今頃、カードを ? 』
 
 
 
と問われても、彼女には答えが見つからなかったし、
 
 
 
感情にまかせて言い訳がましく話したら、
 
 
 
結局は、涙まじりで湿っぽくなって、カードを渡したことを後悔するように思った。
 
 
 

彼女は、ミズ ビーにとって、『 マミー 』でも、

 
 
 
彼女とミズ ビーが出会ってから、彼の出現があったわけだから、
 
 
 
彼は、父親を表す名前で呼ばれることも、自分自身を、そう呼ぶことも無かった。
 
 
 

ミズ ビーの彼に対する振る舞いや行動は、彼女に対するのとは、ちょっと違っていた。

 

 

 

彼が、ドアを開ける前から耳をピーンと思いっ切り立てて興奮しだし、

 

 

 

彼の顔をみると、目が潤んでピュアに輝き、

 

 

 

飛び跳ねながら全身で嬉しさを表現しようとして、それがおさまるのに時間が掛かった。

 
 
 
一緒にドライブしていても、彼が車から出て、歩き出すと、
 
 
 
必死になって彼の行く方を目で追い、
 
 
 
見えなくなると、落ち着きなく悲痛な声で、まるで、2度と会えない大切な人との劇的な別れのようにして鳴いた。
 
 
 
しかしながら、
 
 
 
彼女が車から出て歩いても、彼が車の中にいれば、微笑んでいるだけで鳴くことは無かった。
 
 
 
彼は、
 
 
 
「 君は、絶対に帰って来ると信頼しているからだろう、きっと! 」
 
 
 
と言ったが、
 
 
 
彼女は、そんなミズ ビーを見て、
 
 
 
「 まるで、あなたに恋をしているみたい。かなり、強力なライバルって感じ!」
 
 
 
そう言って、彼を笑わせたものだった。
 
 
 
その時、彼が笑うのを見て、ミズ ビーは、本当に嬉しそうだった。
 
 
 
『 Father 』と言う名目では無かったけれど、、、、
 
 
 
彼は、ミズ ビーにとって、
 
 
 
とても、
 
 
 
とても、
 
 
 
『 大切な存在 』
 
 
 
だったのは間違い無い。
 
 
 
『 父の日 』に、
 
 
 
そう思いながら、
 
 
 
彼女は、
 
 
 
彼の横顔を見つめ、


 
『 カードは、、、、渡せない 』
 
 
 
そう思うのだった。