犬の同情と予感

ミズ ビーが亡くなる1年位前だったと思う。

 
 
 
いつものように、ミズ ビーを外に連れ出して歩くと、2頭の犬を連れた人が向かい側から歩いて来た。
 
 
 
その頃、ミズ ビーは、他の犬には全く興味を示さず、気配を感じても、顔を背けたり、時には体を振るわせていた。
 
 
 
そして、太陽の光が照りつける場所へと、どんどん歩いて行き、彼女は持っていたリーシュを引っ張られるままに、ミズ ビーの後方を歩き、時々、ミズ ビーの顔を振り向かせて見るために、立ち止まったりした。
 
 
 
そんな時、ミズ ビーは、彼女の目を悲しそうに見た。
 
 
 

「 ごめんね! ミズ ビーの顔を見たかっただけなの。さぁ、続けよう! マミー、付いて行くから! 」

 
 
 
そう言うと、ミズ ビーは、また歩き出した。
 
 

 
 
2頭の犬を連れた人が向かい側から歩いて来て、彼女は、道の幅から考えると、同時に、ミズ ビーと彼女がすれ違うのは、ちょっと無理があるように思えたので、手前で、道のサイドの草の上にミズ ビーをのせるようにして、その人と犬が通れるようにして立ち止まって待つことにした。
 
 
 
その人が、どんどん近くなり、ほぼミズ ビー位の大きさの犬と小型犬が嬉しそうに、歩いて来るのが見えて、もうちょっとで、彼女の横を通り過ぎると言うところで、
 
 
 
サイドから、誰かが、その人に声をかけ、小型犬の方を撫で出した。
 
 
 

ミズ ビーと同じぐらいの大きさの犬は、すぐ近くにいたミズ ビーの存在に、なぜかしら、すぐには気付かなかったが、

 
 
 
突然、一瞬、目を大きく開けるようにして、とてもショッキングな顔でミズ ビーを見つめ、それから、物凄く困ったような辛そうな顔をした。
 
 
彼女が、ミズ ビーの方を見ると、ミズ ビーは顔を背け、その犬から見えないようにしていた。
 
 
 
 
彼女は、その犬が、あの時、見せた表情を見て、
 
 
 
 
 
『 犬は、何を見たのだろう? 』
 
 
 
『 ミズ ビーの何を見たのだろう?』
 
 
 
 
 
今でも、そう思う。
 
 

 
 
犬にも、人間と同じように、『 予感 』みたいなパワーがあるのかも知れない。
 
 
 
その犬は、それまで、ミズ ビーに会ったことは無かった。
 
 
 
そして、その犬にとっても、ミズ ビーにとっても、その出会いは、最初で最後だった。
 
 
 
小型犬は、ミズ ビーの存在に全く気が付かなかった。
 
 
 
『 犬は、人の気持ちがわかる。』
 
 
 
だけでなく、
 
 
 
『 犬は犬の気持ちもわかる。』
 
 
 
のかもしれない。
 
 
 
飼い主と通り過ぎる時、その犬は、悲しそうに下を向き、それから、一瞬、ミズ ビーを見てから、また下を向き、静かに足音を殺すようにして歩いた。
 
 
 
ミズ ビーを見るまで、上向きで嬉しそうにして歩いていたのに、、、、
 
 
 

彼女は、

 
 
 
 
 
 
ミズ ビーの死が近付いているのかも知れない、、、、
 
 
 
 
 
 
と思いながら、ミズ ビーには、それを知って欲しくなかった。
 
 
 
その犬も、ミズ ビーも、その時、全く吠えたり、音を立てる事は無かったが、何かしら通じ合っていたのかも知れない。
 
 

 
 
ミズ ビーは、その頃から亡くなるまで、彼女の顔を見るたびに涙を流した。
 
 
彼にも、獣医にも、涙を見せなかったから、彼女が、ミズ ビーの目は見えていないか、何かの病気と関係しているのかも知れないと言っても、2人とも問題にしなかった。
 
 
 
あの涙が、心から来る涙だったとしたら、、、、
 
 
 
ミズ ビーは、彼女との別れを予感していたのかも知れない。