ワガママ

犬好きの彼女の母親は、よく言ったものだ。

 

 

犬好きの人は自分の思い通りにならなければ気がすまないワガママな人が多いと。

 
 
 
『 犬は、飼い主に言われたことに耳を傾け、言うことを聞くじゃない? だから、犬を飼っているって感じの人、いっぱい見たもの。』
 
 
 
ティーンになって、親の言う事にツッコミを入れられるように成った彼女は、
 
 
 
『 自分も含めてってこと? そう言えば、よく、自分の思い通りに行かない時は、ポポに八つ当たりしているものねー? 』
 
 
 
そう言って笑ったものだった。
 
 
 
思い当たる節があるのか、母親は、
 
 
 
『 まぁー、失礼な!』
 
 
 
と言いながら、背中を見せて、もうそれには触れず、彼女から遠のいて行くのが通常だった。
 
 
 
ポポは、そんな母親の後ろを、なぜだか嬉しそうに歩いていた。
 
 
 
それは、
 
 
 
『 お姉ちゃん、ありがとう! 全く、その通り! 代わりに言ってくれて、ありがとう! きっもちいいわ〜!』
 
 
 
と彼女に言っているようにも、
 
 
 
『 ママ、そんなこと、これっぽっちも思っていないよ。ママの近くにいるだけで、物凄く幸せなんだもの。八つ当たりされるの怖くて嫌だけど、それで、ママの気がすむのなら、全然、気にならないもの。むしろ、お役に立てて嬉しいと思っているよ。』
 
 
 
と母親に言っているようにも見えて、
 
 
 
彼女は、その汚れの無い健気な姿がたまらなく愛らしいと思ったものだった。
 
 
彼女は、犬も猫も、他の動物も好きだけれど、犬が好きで飼っていると言う人の中には、確かに、犬が好きな理由として、
 
 
 
『 言う事を聞いて従ってくれるから 』
 
 
 
と言う人は多い。
 
 
 
彼と彼女が、ミズ ビーが生きていた時に、ミズ ビーの食事やドクターや薬や治療の決断をしたことに、今でも、度々、思うのは、
 
 
 
『 本当に、あれで良かったのだろうか? ミズ ビーは、あの私達の全ての選択に賛成し満足していただろうか? 私達、特に、私が飼い主で無かったら? 、、、、私で良かったのだろうか?』
 
 
 
考えれば考えるほど、そして、繰り返し考えても、ため息と涙が出て、結局は行き詰まる。
 
 
 
彼が、
 
 
 
「 考えても仕方ないじゃないか?! もういないのだから! あれで良かった、あれしか無かったと、思うしかないよ。」
 
 
 
と言うのは分かっている。
 
 
 

彼に、

 
 
 
「 私の事なんか、どうでもいいみたいじゃない? 自分の事だけ考えているのでしょう?! 」
 
 
 
そんな風に、子供みたいに拗ねた自分を、今、彼女は、
 
 
 
確かに、自分勝手で甘えん坊で、彼の注意を充分に受けられないことにイラついて、
 
 
 
『 ワガママ 』
 
 
 
だったと思っている。
 
 
 
ミズ ビーにも、気を使わせたり、心配させた時も、多々、あったに違いない。
 
 
だから、何度、言っても言い切れない。
 
 
 
『 ミズ ビー、ごめんね。そして、ありがとう! 』