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海岸沿いで出逢った犬

彼女は彼の誘いを受けて、海が見える海岸沿いを歩いた。

 
 
 
「 此処には、ミズ ビーと来たことが無かったように思うのだけど、、、、 」
 
 
 
彼女が、歩いている彼の横顔を見て、そう言うと、
 
 
 
彼は、
 
 
 
「 来たことないよ 」
 
 
 
と、すぐに応えた。
 
 
 
「なぜ、、、、ミズ ビーを此処に連れて来なかったのだろう?  
 
遠いわけでもないし、犬も歩いているのに、、、、」
 
 
 
彼女が不思議に思いながら、そう言うと、
 
 
 
「 俺にも、わからない。  最近、此処を見つけたんだ。」
 
 
 
彼は、彼女の顔を見る事も、歩くペースを変えることも無く、そう言った。
 
 
 
彼女は、彼が無表情でいるように感じたが、サングラスに覆われた彼の目が見えないだけかも知れないと思った。
 
 
 
周りに、人も犬も多くいる所で、彼が感情を出さないことはよくある事だった。
 
 
 
それゆえ、彼女も、周りに気付かれないように、感情をおさえる努力をした。
 
 
 
海風が冷たく彼女の頬を通り過ぎ、彼女の髪を乱雑に宙に浮かせた。
 
 
 
「 ミズ ビー、此処を歩いたら、喜んだだろうねー。
 
風が顔にあたるのが大好きだったから 」
 
 
 
そう言いながら、ミズ ビーが強い風に対抗するようにして、
 
思いっ切り嬉しそうに歩く姿を彼女は思い浮かべ、
 
 
 
目には見えなくても、ミズ ビーが近くにいるように感じ、
 
一瞬、彼以外の存在が無に思えた。
 
 
 
ミズ ビーが元気に彼女の前を歩いていた頃は、彼女の目は、ミズ ビーに釘付けだった。
 
 
 
景色を観賞する時間は、あまり無かった。
 
 
 
ちょっとでも目を離して、ミズ ビーが、リスや猫やトカゲなどの生き物を見つけたら、ただ一直線に、それを目掛けて突進するだけだった。
 
 
 
そうでなくても、周りの迷惑を考えない大人達や子供達によって捨てられた悪い物を口にする可能性もあった。
 
 
 
どれだけ多くのペット犬達が、食べてはいけない物を食べてしまい病気になったり、苦しみながら命を落としたことだろう?
 
 
 
そう考えだだけでもゾーッとした。
 
 
 
 

他人の目からは、彼女がミズ ビーを歩くのは大変なこととして写っていても、彼女にとっては、小言を言いながらも、幸せを感じられる時間だった。

 
 
 
もっと、もっと、ミズ ビーと一緒に歩きたかった。
 
 
 
そして、1分でも、1秒でも多く、ミズ ビーが歩ける時に歩くべきだった。
 
 
 
彼女は、そう思う。
 
 
 
「 また、後で歩くのだから、帰ろう ! 」
 
 
 
そう言って、ミズ ビーの引っ張るリードを引いてUターンさせたことが、何度、あっただろう?
 
 
 
ミズ ビーは、驚きと落胆の気持ちを顔に表して彼女の顔を見た後、仕方なさそうに彼女に従った。
 
 
 
ミズ ビーは、あの時、こう言いたかったのではないだろうか?
 
 
 
 
『 あなたにとっては、歩くのは当たり前のことで、これから先も、歩きたい時に歩けるだけ歩くでしょうね。、、、、
 
だけど、私にとっては、残された歩ける時間は、もうちょっとで終わろうとしている。
 
だから、あなたの言うように、後で歩くより、
 
歩ける今、歩きたい。』
 
 
 
 
あの時、あんなことを言わずに、Uターンせずに、ミズ ビーの気がすむまで歩くべきだった。
 
 
 
確かに、暗くなって来たから安全のために帰らねばと思ったのだが、
 
それならば、なぜ、早めに外に出なかったのか?
 
 
 
そう思う時、自分のエゴと勝手さに、彼女は人間としての汚さを感じるのだ。
 
 
 
ミズ ビーは、もっと歩きたかった。
 
 
 
それなのに、自分の事を理解してくれていると思っていた彼女からの拒絶は、ミズ ビーを不安にしたに違いない。
 
 
 
 
『 今は、
 
誰の目からも見えないミズ ビーが傍にいて、
 
一緒に、
 
この冷たい風を感じているかも知れないと願いながら、
 
歩くだけ、、、、』
 
 
 
 
そんな風に海を見ながら歩いていたら、
 
 
 
白い大型犬が正面から歩いて来て、彼女の目を見つめた。
 
 
 
そして、何かに気がついたような表情になった後に、彼女の真ん前まで来て、彼女の顔を見上げた。
 
 
 
彼女が、その犬の頬を優しく撫でると、犬は目を細め、大きな体を彼女の足に擦り付けた。
 
 
 
彼女は、犬の背中を撫でながら、とても懐かしい気持ちになり、
 
 
 
 
そのまま、ずーっと撫でていられたら、、、、
 
 
 
 
と、ほんの一瞬だけ思ったが、すぐに、その犬の飼い主を確認してから、
 
 
 
 
『  ありがとう。私の気持ちを分かってくれたのね。
 
もう、いいよ。飼い主の元にお帰り! 』
 
 
 
 
そう心の中で犬に囁いた。
 
 
 
犬は、飼い主の元に戻って行き、もう一度、彼女の方を見た。
 
 
 
 
『  一期一会だね。』
 
 
 
 
彼女は、そう思って、微笑んだ。
 
 
 
 
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