想い出の場所、大切なのは、、、、

彼が言った。

 
 
 
「 ミズ ビーが亡くなってから、もうすぐ二年だろう? 休暇が取れたんだ。 君が、ミズ ビーとの想い出のためにも、行きたいって言っていた、あの場所に、今でも行きたい気持ちがあるか?」
 
 
 
「 うん、もちろん、今もあるわよ。あの海岸を歩きたい。哀しいかもしれないけど、ミズ ビーが喜んでくれるかも知れないから、、、、」
 
 
 
彼女は、そう言った。
 
 
 
『 あの想い出の場所 』とは、彼女とミズ ビーが彼に出会ってから、初めて出かけた泊りがけの旅行先のことだった。
 
 
 
まだ二歳にも成らなかったミズ ビーは、リード無しで海岸を駆けるようにして走り、海に、ちょっとだけ足をつけては、近づく波から逃げていた。
 
 
 
彼女がミズ ビーの名前を呼ぶと、すぐに駆けて戻って来た。
 
 
 
まだ新しかった海岸沿いに建つコンドを借りた。
 
 
 
そこには都会の騒音は全く無かった。
 
 
 
パティオの正面には海があり、そこに立つと、冷たい海風が気持ち良かった。
 
 
 

その時から、二人にとっては信じられない16年と言う長い年月が経っていた。

 
 
 
ちょっと複雑な気持ちでコンドに着いて、中に入ると、そこは、彼と彼女の記憶にあった場所とは、かなり違っていた。
 
 
 
オーナーが、長い間、放ったらかしにしていたのか、全体的に、すっかり古びて、カーペットにもシミが付いていて、臭いも、心地好いものではなかった。
 
 
 
彼女が、溜め息をつくと、彼は、
 
 
 
「 だろう? 今日は、もうチェックアウト出来ないけど、明日、ここを出よう!」
 
 
 
そう言った。
 
 
 
彼女は、気を取り直して、彼が火を付けた暖炉を見て、
 
 
 
「 その暖炉の前で、火を見ながら、ミズ ビー、座るの、好きだったよねー? 」
 
 
 
そう言うと、彼は、頷きながら、
 
 
 
「 暖炉が好きな犬だったからな〜 」
 
 
 
微笑みながら、そう言った。
 
 

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それから、二人で海岸を一緒に歩いた。
 
 
 
そして、其処でのミズ ビーの想い出話をした。
 
 
 
しかしながら、
 
 
 
彼女は、ミズ ビーと歩いた時とその時を結びつけることが出来なかった。
 
 
 
ミズ ビーのために歩こう、
 
 
 
彼女は、そう思って歩いたのに、妙に体も足も重く感じ、ミズ ビーを探している自分に気が付いて、虚しかった。
 
 
 
そして、ミズ ビー無しで、そこを歩くことに意味が無いように思えた。
 
 
 
二人は、自然と、言葉が少なくなり、何処まで歩いたら戻るかを話し出した。
 
 
 
 
「 ミズ ビー、喜んでいるかなー?」
 
 
「 喜んでいるさ、、、、。」
 
 
「 本当に、そうだろうか? 」
 
 
 
 
翌朝、早々に其処をチェックアウトして、車に乗り込み、海岸線沿いに車を走らせながら、
 
 
 
 
 
「 あそこ、スッカリ変わっちゃったね。 、、、、ガッカリしたけど、たとえ、変わっていなかったとして、、、、ミズ ビー無しで滞在しても、、、、ぜーんぜん、楽しくなかったと思うの。今回の事で、良く分かったの。場所じゃないのよ! 誰と一緒だったかが大切なんだって。 もう、あそこには、ほとんど未練が無いような気がする。 新しいワンちゃんを迎えられるようになって、そのワンちゃんをあそこに連れて行って、、、、ミズ ビーと一緒に来た所なんだよ、それで、ミズ ビーね、、、、みたいな感じで話すかもしれないけど、、、、。それとも、ミズ ビーとの大切な想い出のあそこみたいな場所には、後から来るワンちゃんは連れて行かないかも知れない。、、、、あの想い出をミズ ビーとだけのものにしたい気持ちもあるから。それに、ミズ ビー、ヤキモチ焼きで、独占欲、強い方だったしね。」
 
 
 
 
 
彼女は、そう言った。
 
 
 
彼は、前だけを黙って見ながら頷いた。
 
 
 
サングラスに隠れた彼の目を彼女は覗き込むようにして見たが、よく見えなかった。
 
 
 
 
( 御訪問、ありがとうございます。私事ながら、コメントの返答は暫く休ませて頂きます。場所によりますが、冷え込む場所に居られる方は、風邪などに、お気をつけ下さいませ。)
 

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