カフェにでも行きますか?

ミズ ビーが亡くなってから、週末であっても、めっきり出かけることが少なくなった彼と彼女だったが、彼女は、カフェでブランチでもしないかと彼に訊いた。

 
 
 
突然の誘いに、彼は驚いた顔をしたが、彼女の気が変わってはいけないと思ったのか、
 
 
 
「 いいよ! 君が行きたいのなら、問題なくOKさ!」
 
 
 
と、すぐに笑顔で答えた。
 
 
 
その時の彼の顔がパーッと明るくなったのを見て、彼女は、彼が、それまで彼女の顔を窺いながら、出かけたくても、そう言えなかったのかも知れないと思い、申し訳ない気持ちになった。
 
 
 
出かける支度をしながら、彼は、
 
 
 
「 どうして、急に、出かける気持ちに成ったんだー?」
 
 
 
と言った。
 
 
 
彼女は、ほんの一瞬、下を向いて躊躇うようにしたが、直ぐに彼の方を見て、
 
 
 
 
「 ハッキリ言えないけど、、、、出かけて、他人から嫌な気持ちにさせられたとしても、、、、あなたと一緒だし、、、、私のような経験をした人達も必ずいるわけで、私、独りじゃないわけでしょう?! 嫌な気持ちになった場所には、バイバイすれば良いだけのこと。以前は、引き算人生が、とっても嫌だった。選択を失うことを怖れ、追い込まれて行くような、そんな気持ちになった。だから、何とかして、そちらの要求に合わせようとした。だけど、駄目だった。、、、、今は、どんどん削除して行く事によって、大切なものが見えて来る、人生がシンプルに成って行く、いわゆる、引き算人生が自分に合っているような気がするの。」
 
 
 
 
そう言うと、彼は、嬉しそうに微笑んで、
 
 
 
「 そうさ、それで良いんだよ! 人生は短いのだから!」
 
 
 
と、言った。
 
 
 
カフェは、彼女が選んだ。
 
 
 
美味しいクレープが食べたかったからだ。
 
 
 

小雨が降り出したためか、客は、あまり多くいなかった。

 
 
 
お茶とデザートだけだったら、ソファーに座っていただろうけれど、軽食をしたかった二人は、テーブル席を選んだ。
 
 
 
食事が運ばれてくる間、二人が取り留めのない話をしながら、彼女は、近くにある誰も座っていなかったソファーをチラチラッと見ながら、
 
 
 
ミズ  ビーが、そこに座っていたら、ミズビーの輝く毛とソファーの色がマッチして、美しいだろうなぁ〜、
 
 
 
と思った。
 
 
 
そして、ミズ ビーが体を伸ばして寝転がっているソファーに駆け寄って、顔にキスをして、端に座って、テーブルに置かれている美術マガジンを手に取って中を覗きながら、気持ち良さそうに寝ているミズ ビーを見て、眠くなっているだろうなぁ、
 
 
 
そう、頭の中で描いて、思わず微笑んだ。
 
 
 
生きていたら、車の中で、二人を待たなければならなかっただろう、
 
今は、カフェの中でも一緒に入れる、
 
そう思うと、嬉しくもあり、そして、それ以上に哀しかった。
 
 
 
彼は、そんな彼女の様子を不思議そうに見ながら、目で、
 
どうしたの?
 
と訊ねた。
 
 
 
彼女は、微笑みながら下を向き、頭を大きく左右に振って、
 
何でもない、
 
と応えた。
 
 

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彼は、キッシュ、
 
彼女は、ブルーベリークレープ、
 
 
 
二人が食べ出すと、子供連れのカップル達がドヤドヤっとカフェに入って来た。
 
 
 
子供達がソファーに座って騒ぎ出した。
 
 
 
彼女は、手を休めて、そちらの方を見たが、ミズ ビーは、居なかった。
 
 
 
 
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